Doがぞう
有森裕子の引退レース
転んで傷だらけになりながらも、笑顔と涙でコースを駆け抜けた。引退レースとなった18日の東京マラソンを、2時間52分45秒の5位で完走した五輪女子マラソン2大会のメダリスト、有森裕子さん。山あり、谷ありの競技生活を象徴するラストランに「最高の終わり方ができました」と声を詰まらせた。
ハプニングが起きたのは22キロ過ぎ。後続ランナーと足がぶつかり、前のめりに転倒した。腰や胸を強打し、両方のひざと手のひらから出血。「気がついたら目の前に地面。これで終わりかと思った」。しばらく、うずくまったが、「きょうははってでもゴールすると私が言ったんだから」と自らを奮い立たせた。寒さで痛みがまひしたのを幸いに、懸命にゴールを目指した。
「アリモリという人が大勢走っているんじゃないかと思うぐらい、みんなが私の名前を呼んでくれた」。感激がこみ上げ、目頭が熱くなった。5年3カ月ぶり通算12回目のマラソンでタイムは最悪だったが、「満足です」という走りだった。
92年バルセロナ五輪で、陸上日本女子64年ぶりとなる銀メダルを獲得。かかとを手術するなどの苦難を乗り越えて挑んだ96年アトランタ五輪では銅メダルを手にした。その後、日本の陸上女子として初のプロ選手に。先進的な動きに、周囲から批判的な声も上がった。だが、企業を離れた利点を生かし、カンボジアの対人地雷除去支援などをするNPOを設立し、国連親善大使や、スポーツ選手のマネジメント会社の役員も務める。
スポーツ選手として新たな道を切り開いてきた有森さんは「ランナーとして、やり残したことは、これからの人生でトライし、表現していきたい」と将来の夢を描く。レース後、恩師の小出義雄さんから「おまえの影響は本当に大きいよなあ」と声をかけられ、また胸が熱くなった。
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